製造業のDXが進まない理由|情報分断と属人化を防ぐ考え方

明るい工場事務所で、タブレットを手に生産ラインを見渡しながら考える40代の日本人製造現場責任者

「DXを進めましょう」と社内で声をかけても、なかなか前に進まない。そんな状況に心当たりはないでしょうか。

新しいシステムを検討しても、どこから手をつければよいのか分からず、結局は現状維持のまま時間だけが過ぎていく。こうした停滞は、意欲や知識が足りないから起きるとは限りません。

多くの場合、現場の情報がどこにどう存在しているのかが整理されておらず、改善の起点そのものが見えにくくなっていることが背景にあります。

この記事では、製造業でDXが進みにくくなる典型的な状況と、その背景にある情報分断・属人化という2つの原因を整理します。そのうえで、無理なく改善を始めるための考え方についても触れていきます。

すでに何らかのシステムを検討したことがある方も、これから初めて取り組む方も、まずは「なぜ止まってしまうのか」を分解して考えることが、次の一歩につながります。

目次

製造業のDXが止まりやすい状況とは

DXという言葉自体は社内で共有されていても、実際の取り組みが止まってしまう場面は少なくありません。

たとえば、経営層は「現場のことは現場に任せている」と考え、現場は「経営層が方針を示してくれない」と感じている。双方の認識にずれがあると、誰が最初の一歩を踏み出すのかが曖昧なまま時間が過ぎていきます。

また、紙やExcelでの管理に限界を感じつつも、日々の業務に追われる中で、情報の整理そのものに手をつけられないというケースも見られます。日報や工程実績、原価に関する数字が現場ごとに分散していると、まず何を確認すればよいのかを把握すること自体に時間がかかってしまいます。

こうした状況が積み重なると、DXは「いつか取り組むべき課題」として先送りされがちになります。しかし、止まっている理由を分解していくと、多くの場合は情報分断と属人化という2つの原因に行き着きます。

どちらも、担当者の能力や意欲が足りないために起きるわけではありません。むしろ、日々の業務を回すことを優先してきた結果として、情報の整理が後回しになりやすいという構造的な問題だと捉えたほうが実態に近いといえます。

原因が分からないままシステムだけを検討しても、「導入してみたものの、現場に定着しなかった」という結果になりやすくなります。まずは、自社にとっての「止まっている理由」がどちらに近いのかを考えることから始めてみてください。

情報分断が改善の起点を見えにくくする

情報分断とは、業務に関する情報が部署や担当者ごとに分かれたまま、一元的に把握できていない状態を指します。

生産計画は生産管理担当者、原価に関する数字は原価管理担当者、人事評価は人事担当者というように、それぞれの情報が個別に管理されていると、全体像を把握できる人がいなくなりやすくなります。

その結果、現場で起きている問題と経営判断がかみ合わないという状況が生まれやすくなります。現場では日々の作業に追われて改善点に気づいていても、その情報が経営層まで届かなければ、優先順位をつけた判断にはつながりません。

情報分断が続くと、DXに着手しようとしても「まず何のデータを、どこから集めればよいのか」という入り口の段階でつまずいてしまいます。改善したい対象が曖昧なままシステム導入だけを検討しても、現場に定着しにくいのはこのためです。

また、部署ごとに情報が分かれていると、同じ数字を見ているつもりでも、実際には集計の基準や更新のタイミングが異なっているということも起こりやすくなります。会議の場で数字の食い違いを確認するところから始めなければならず、本来の議論に入る前に時間を使ってしまうケースも少なくありません。

このような状態が続くと、DXへの取り組みは「まず情報を突き合わせる作業」から始めなければならず、着手のハードルが実際以上に高く感じられてしまいます。

属人化がDX推進の足かせになる理由

もう一つの大きな要因が、業務の属人化です。

ベテラン社員の経験や勘に頼った作業が続いていると、その進め方自体が「見えない資産」になってしまい、他の社員と共有しづらくなります。担当者が変わるたびに教え方や品質にばらつきが出やすくなるのも、こうした状態が背景にあることが多いといえます。

属人化した業務は、本人にとっては効率的に感じられても、会社全体で見ると改善の対象として捉えにくいという問題を抱えています。何を、どのような基準で判断しているのかが言語化されていないため、DXで効率化しようにも、対象となる業務の実態がつかみにくいのです。

さらに、評価基準が曖昧なまま属人化した業務が評価されている場合、現場の納得感を得にくいという課題にもつながります。改善の必要性を感じていても、何をどう変えればよいのかが見えず、着手そのものが後回しになりやすくなります。

加えて、属人化は人手不足とも結びつきやすい問題です。特定の社員に業務が集中している状態で、その社員が異動や退職によって不在になると、業務そのものが立ち行かなくなるリスクを抱えることになります。DXを検討する背景には、こうした将来的なリスクへの備えという側面もあります。

情報分断と属人化は、どちらか一方だけで起きているとは限りません。情報が分断されているからこそ、特定の担当者に頼らざるを得ない業務が生まれ、その業務がさらに属人化していくという悪循環につながっている場合もあります。

まずは自社の状況を整理してみませんか

情報分断や属人化は、どちらも「言われてみれば当てはまるかもしれない」と感じる一方で、自社のどこにどの程度当てはまるのかを客観的に整理する機会は意外と少ないものです。

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DXを無理なく進めるための整理の順序

情報分断と属人化という2つの原因が見えてくると、DXを進めるための順序も整理しやすくなります。すべてを一度に変えようとするのではなく、次のような手順で段階的に着手することが現実的です。

  1. 現状、どの情報が誰の手元にあり、どこで止まっているのかを洗い出す
  2. その中で、特定の担当者しか対応できない業務を特定する
  3. 影響の大きい業務から優先順位をつけて着手する
  4. 紙やExcelで管理していた情報を、まずは記録として残せる形に整える
  5. 一部の業務で運用を定着させたうえで、対象範囲を段階的に広げる

この順序で進めることで、「何から手をつければよいか分からない」という状態を抜け出しやすくなります。重要なのは、最初から完璧な仕組みを目指すのではなく、まず記録として残す範囲を決めることです。

情報が記録として蓄積されるようになると、経営層と現場の間で共通の材料をもとに話ができるようになります。これは、DXを進める上での土台づくりともいえる段階です。

特に、優先順位をつける際には、「影響範囲が広い業務」と「属人化の度合いが高い業務」の両方の観点から見直すことをおすすめします。どちらか一方だけで判断すると、実際に着手してみたときの負担と得られる効果が見合わないという状況になりやすいためです。

また、段階的に範囲を広げるという考え方も重要です。最初からすべての部署、すべての業務を対象にしようとすると、関係者の合意形成だけで多くの時間がかかってしまいます。まずは一つの工程、一つの業務から始め、運用が定着した実感を得たうえで次の範囲に広げていくほうが、結果として着実に前進しやすくなります。

見える化から始めるという考え方

DXという言葉から、大規模なシステム導入をイメージする方も少なくありません。しかし、実際には現場の情報を見える化する段階から始めるという進め方もあります。

ニューピークが提供するNEWPEAK DI Cloudでは、原価の見える化、人事評価の見える化、AI作業マニュアルによる作業の見える化など、現場の情報を段階的に整理していくための機能が用意されています。すべての機能を一度に導入する必要はなく、必要な機能から選んで始められる料金体系になっている点も特徴です。

実際に、日本スワコー株式会社の製造課では、PDAを使って生産実績を入力する運用に切り替えたことで、材料費だけでなく作業にかかった時間まで数値として蓄積できるようになりました。これにより、赤字が続いていた加工工程が数字として確認でき、改善に取り組んだ結果、プレス加工にかかる時間は1個あたり0.8秒から0.5秒へ、後工程の手作業は3.73秒から3秒へ短縮されています。

このケースで語られているように、導入した当初は入力に慣れるまでの負担もありました。それでも、紙に記録していた情報がデータとして残ることで、上司や管理側が現場の状況に気づきやすくなったという声が聞かれています。DXは一足飛びに完成するものではなく、記録の置き換えから少しずつ効果が積み重なっていくものだといえます。

このケースでもう一つ注目したいのは、データ化によって過去の実績を検索しやすくなったという点です。以前は紙の生産指示票や日報を探すところから始めなければならなかった確認作業が、必要な情報をすぐに呼び出せるようになったことで、日々の業務にかかる時間そのものが変わってきています。

情報が分断されず、特定の担当者に頼らなくても状況を把握できる状態は、DXが目指す姿の一つだといえます。NEWPEAK DI Cloudでは、こうした見える化を、原価・人事評価・作業手順という複数の切り口から段階的に支援しています。自社の課題がどこにあるのかによって、着手する機能を選べる点も、無理なくDXを進めるうえでの選択肢になります。

何から着手すべきか、話しながら整理する方法もあります

情報分断や属人化の状況は、業務によって現れ方が異なるため、自社だけで優先順位を判断しづらいという声も少なくありません。

ニューピークのオンライン相談では、現在の状況をお伺いしながら、どこから着手するとよいのかを一緒に整理します。導入を前提とした相談ではなく、情報収集の段階でもご利用いただけます。

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まとめ|止まっている理由を分解することから

製造業でDXが進まない背景には、情報分断と属人化という2つの原因が潜んでいることが少なくありません。どちらも、意欲や体制の問題というよりも、情報がどこにどう存在しているかが整理されていないことに起因しています。

まずは、現状の情報の流れを洗い出し、属人化している業務を特定するところから始めてみてください。すべてを一度に変える必要はなく、記録として残せる範囲から着手することで、DXは着実に前進していきます。

自社の状況を整理する際には、何から着手すべきかを客観的に確認できる材料があると、判断がしやすくなります。

実際の画面を見ながら検討したい方へ

考え方を整理したうえで、実際にどのような形で情報を記録・確認できるのかを確認してから検討したいという場合は、NEWPEAK DI Cloudの簡易的な管理画面を無料で確認できるトライアルもご用意しています。

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