生産管理の現場情報を経営判断に活かすには?連携の視点と進め方

月次の会議で、経営層から「今月の生産状況と、利益の見通しはどうなっているのか」と尋ねられ、現場の担当者に確認して回るうちに、答えが出るまで数日かかってしまう。工場長や製造部門を預かる立場の方なら、こうした場面に心当たりがあるのではないでしょうか。
現場では、毎日のように生産実績や作業時間が記録されています。それにもかかわらず、経営の判断に必要な形で手元にそろわないのは、記録そのものが足りないというより、現場の情報と経営が見たい数字とのあいだに、つなぎ目が用意されていないことが一因と考えられます。
この記事では、生産管理の情報を経営判断に活かすために、現場と経営のあいだで生じやすいズレを整理し、どのような状態を目指すのかを比較しながら確認します。あわせて、株式会社ニューピークの公式サイトで紹介されている導入事例や導入の進め方を参照しながら、無理のない広げ方を考えていきます。
なお、ここでお伝えするのは、すべてを一度に変える方法ではありません。現場の負担を増やさずに、まず何を見えるようにするのか。その順序を決めるための視点として、お読みいただければ幸いです。
生産管理の情報が経営に届くまでに生まれやすい三つのズレ
現場の生産管理と経営とのあいだでは、同じ工場の話をしていても、見ているものが異なることがあります。現場は今日の進捗や段取りを見ており、経営は利益や今後の見通しを見ています。この「見ている単位の違い」が、最初のズレになりやすいところです。どちらが正しいという話ではなく、役割の違いから自然に生じるものといえます。
二つ目のズレは、情報の集まり方です。日報や工程の記録が紙や表計算ソフトに分かれて保管されていると、必要な数字を集めて整えるまでに手間がかかります。ニューピークのオンライン相談ページでも、日報、在庫、工程、原価などの情報が分散し、確認や集計に時間がかかっている状態が、お悩みの一つとして挙げられています。
三つ目のズレは、数字の切り取り方です。たとえば、材料費だけを見ると問題がなさそうな製品でも、加工や手作業に時間がかかっていれば、その分だけ原価は上がっていきます。経営が見たい利益の数字と、現場が持っている時間の記録が結びついていないと、どの製品や工程で利益が削られているのかを特定しにくくなります。経営が「なぜ利益が出ていないのか」と問うても、現場は答えるための数字を探すところから始めることになりかねません。
これらのズレは、誰かの努力不足で起きるものではありません。現場は目の前の生産を止めないことを優先し、経営は限られた情報から判断を求められる。それぞれが合理的に動いているからこそ、つなぎ目が抜け落ちたまま続いてしまいやすいのです。
こうしたズレをそのままにしておくと、経営の判断が後追いになりやすくなります。月末に集計した数字で初めて赤字に気づく、あるいは現場では感覚として把握していることが、会議の席では数字として示せない。そうなると、改善に踏み出すかどうかの議論が、経験や印象の言い合いになってしまうこともあります。工場長としては、現場を守りたい思いと、経営に説明できる材料をそろえたい思いの板挟みになりやすい場面です。
つなぎ目の位置が分かれば、手を入れる場所は絞れます。全体を一気に整えようとするのではなく、どのズレが自社で最も大きいのかを見極めることが大切です。まずは、現場の担当者の声も聞きながら、自社の工場でどのズレが大きいのかを書き出してみることが、最初の一歩になります。
利益が減っている場所を、現場目線で書き出してみる
ズレの大きさは、工場ごとに異なります。まずは、自社のどこに情報のつなぎ目が足りないのかを、紙の上で整理してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
ニューピークの資料ダウンロードページでは、「どこで利益が減っているのか」「どこにムダやロスがあるのか」を現場目線で整理するための原価チェックシートを、無料で配布しています。
現場情報が経営判断に活きている状態と、活きていない状態の違い
ズレを解消した先にどのような状態を目指すのかを、あらかじめ言葉にしておくと、施策の優先順位を決めやすくなります。ここでは、現場の生産情報が経営判断に活きている状態と、そうでない状態を、四つの観点で比べてみます。
| 観点 | 活きている状態 | 活きていない状態 |
|---|---|---|
| 情報の集まり方 | 実績が同じ場所に蓄積される | 紙や表計算ソフトに分散している |
| 数字の見え方 | 材料費に加え作業時間も確認できる | 材料費など一部の数字にとどまる |
| 課題の見つかり方 | 数字をきっかけに気づける | 経験や感覚に頼って気づく |
| 会議での使い方 | 現場と経営が同じ数字で話せる | 確認や集計に時間がかかる |
この表は、自社がどちらに近いかを考えるための目安です。右側に当てはまる項目が多いほど、現場と経営のあいだのつなぎ目に手を入れる余地があると考えられます。
大切なのは、左側の状態を最初から完璧に目指すことではありません。四つの観点のうち、経営として最も知りたい数字はどれか、現場として最も負担なく記録できるものはどれか。その重なる部分から着手するほうが、無理なく続けやすくなります。
生産実績のデータ化が、赤字工程の改善につながった事例
現場の記録を、改善や経営の判断材料として使えるようにした例として、ニューピークの公式サイトでは、日本スワコー株式会社の製造課の声が紹介されています。
同社の現場では、PDAを使って生産実績を入力し、数量や作業時間を原価管理のためのデータとして蓄積しているとのことです。売価に対して実際の原価がどの程度なのかを確認するために、材料費だけでなく、作業にかかった時間も含めて見られる点が重要だと紹介されています。
ある製品の、3トンのプレス機を使った難易度の高い加工では、原価データを見るなかで毎回赤字になっていることが数字として確認され、「これは分析が必要だ」という判断につながったそうです。技術チームが金型や工法を見直した結果、プレス加工は1個あたり0.8秒から0.5秒に、後工程の手作業は1個あたり3.73秒から3秒に短縮されたと紹介されています。
ここで注目したいのは、問題意識そのものは以前から現場にあったという点です。数字として赤字が確認できたことで、分析に踏み出す根拠がそろい、改善の優先順位を決めやすくなったと読み取れます。
また、同じページでは、上司や管理側が現場の状況に気づきやすくなったというメリットも語られています。紙に書いていた時には伝えにくかった「どこに時間がかかっているか」が、データで見えるようになったという内容です。現場の記録が、管理側が状況をつかむための共通の材料になった例といえるでしょう。
ただし、この事例は日本スワコー株式会社の現場での取り組みであり、同じ結果をお約束するものではありません。自社に置き換える際は、どの工程や製品で同じ視点が使えそうかを考える材料として、参考にしてください。
経営視点では「生産実績」と「原価」を切り離さずに見る
生産管理の情報を経営判断に結びつけるとき、生産実績だけ、原価だけと切り離して見ると、判断が偏りやすくなります。たとえば、生産数が計画どおりに進んでいても、加工に想定より時間がかかっていれば、利益は思うように残らないかもしれません。
ニューピークの公式サイトでは、原価の見える化について、材料費・加工費・不良率の整理、赤字要因の把握、不良やロスの分析、改善優先順位の明確化といった内容が紹介されています。生産の実績と原価の情報を近い場所で見られるようにすることは、経営が「どこから手を付けるか」を決める土台になります。
段階的に広げる:機能を選び、必要に応じてERPへ拡張する考え方
現場情報と経営をつなぐ仕組みを整えるとなると、大がかりなシステム刷新を想像して身構えてしまう方もいるかもしれません。しかし、ニューピークの公式サイトでは、必要に応じてERP機能へ段階的に拡張できると紹介されており、最初から業務全体を一度に変えなくても進められる考え方が示されています。
NEWPEAK DI Cloudは、月額のサブスクリプション形式で提供されています。DIプランでは、購買管理・販売管理・生産管理・在庫管理の中から必要な機能を選択できると案内されており、成長に合わせて上位プランへ移行できるという考え方も示されています。生産管理から始める、といった進め方を検討する余地があります。なお、料金の詳細は公式サイトの料金プランでご確認ください。
導入の流れは、ヒアリング、ご提案・初期設定、導入・運用開始、改善サポートの四つの段階で案内されています。導入・運用開始までの目安は約30日で、カスタム開発を除き、データ導入のみの場合は30営業日とされています。実際の期間はご利用内容によって異なる可能性があるため、詳細は個別に確認する必要があります。
まずは対象を絞って始め、現場での運用が落ち着いた段階で範囲を広げていく進め方であれば、現場の負担を抑えながら、経営に必要な情報を少しずつ増やしていけます。
実際に運用している現場の声を読んでみる
ここまでの考え方が、実際の製造現場でどのように受け止められているのかは、導入した企業の声から具体的に分かることがあります。
ニューピークの公式サイトでは、PDAによる生産実績の入力から、赤字工程の改善、過去履歴の検索、管理側による状況把握まで、現場の担当者が語った内容を紹介しています。自社の場合に置き換えて読んでみると、検討の論点が整理しやすくなります。
現場との連携を保つために、導入初期の負担をどう受け止めるか
現場と経営の連携を進めるうえで、見落とされやすいのが導入初期の負担です。日本スワコー株式会社の現場でも、導入当初は新しい仕組みを覚える必要があり、入力忘れや「こういう時はどうすればよいのか」といった確認が発生したと紹介されています。
一方で、時間が経つにつれて作業はスムーズになったという声もあります。現場の感覚としては、これまで紙に書いていたものがデータ入力に置き換わったという捉え方に近いそうです。最初の大変さを率直に共有したうえで進める姿勢は、現場の理解を得るうえで参考になります。
入力を担う現場の担当者にとっては、手間が増えるのではないかという不安があるのが自然です。その不安を否定せず、何のために記録するのか、記録が自分たちの改善にどう返ってくるのかを言葉にして伝えておくことが、連携の土台になります。記録する項目も、必要最小限に絞るほうが続けやすいでしょう。
工場長や製造部門の責任者の方は、経営から見て必要な数字と、現場が無理なく入力できる範囲との調整役になりやすい立場です。導入初期は入力の確認に時間を割く前提で、期待する効果を段階的に設定しておくと、現場の納得感を保ちやすくなるでしょう。
事前に画面を確認しておく方法もあります。ニューピークの無料トライアルでは、簡易的な管理画面にログインし、入力画面や管理項目のイメージを確認できます。すべての機能を自由に使えるものではなく、画面構成や基本的な操作イメージを確かめるためのものですので、その位置づけを理解したうえで、現場の担当者と一緒に見てみるとよいでしょう。
導入後に現場の声を拾う場を、あらかじめ設けておくことも大切です。前述の事例のページでも、数字だけでなくコメントも入力できれば記録としてさらに活用しやすくなるのではないか、という現場の要望が紹介されています。こうした声を次の改善に反映できる流れをつくっておくと、現場が主体的に関わりやすくなります。連携は一度つくれば終わりではなく、運用しながら見直していくものと捉えておくとよいでしょう。
まとめ
生産管理の情報を経営判断に活かすうえで大切なのは、大きな仕組みを一度に入れることよりも、現場の記録と経営が見たい数字とのあいだのつなぎ目を、どこから整えるかを決めることです。見ている単位、情報の集まり方、数字の切り取り方という三つのズレを確認することが、その出発点になります。
日本スワコー株式会社の事例からは、生産実績を作業時間まで含めてデータ化することが、赤字工程の分析と改善の判断につながり、管理側にとっても現場の状況が見えやすくなることがうかがえました。一方で、導入当初には入力に慣れるまでの負担があることも、率直に語られていました。
自社に置き換えるなら、まず知りたい数字を一つ決め、必要な機能だけを選び、現場の負担を見ながら範囲を広げていく順序が現実的です。ニューピークは、スワコーグループにおける20年のERP運用実績をもとに、中小製造業の現場で使えるERPシステムの開発に取り組んでいると紹介されています。経営と現場のどちらか一方だけが頑張る形ではなく、両者が同じ数字を見ながら少しずつ改善を重ねていく。その積み重ねが、判断の速さと現場の納得感の両方につながっていくはずです。経営と現場が同じ数字で話せる状態づくりを、無理のない範囲から進めてみてはいかがでしょうか。
自社の優先順位を、オンライン相談で整理する
経営と現場のどちらの課題から手を付けるべきか、まだ整理できていない段階でも問題ありません。ニューピークのオンライン無料相談では、現在の状況を伺いながら、課題と改善の方向性を一緒に整理します。
相談時間は30分から60分程度で、費用はかかりません。導入を前提としたものではなく、原価、在庫、生産管理などを含む製造現場のご相談に幅広く対応していると案内されています。
製造業DX・生産管理の詳細はこちら
